相続が開始したのに相続人となることができない場合は2つあります。
1つは、民法891条により相続欠格人に該当する場合であり、この場合は法
律上当然に相続権が剥奪されることとなります。
では、どうゆう行為をした者が排除されるのでしょうか。
親や兄弟等を殺害したり、殺害しようとした者がまず挙げられますが、不治の病にかかった親から懇願されて自殺の手助けをした者はどうなるのでしょうか。
この行為は刑法202条自殺関与罪に該当し、「六月以上七年以下の懲役又ハ禁固」に処せられます。親に付添い、看護し、親から頼まれ、見るに見かねて止む無く手を貸してしまった子供が相続権を剥奪され、その者が相続したであろう財産が、親の看護もせず、面倒をみようとしなかった者にいってしまうこととなります。皆さんはこの結論に納得がいきますか。もっとも、相続権を剥奪されるのは、その罪により「刑に処せられた者」に限ります。自殺関与罪に問われ、裁判の結果、実刑が言渡され、それが確定すると欠格者となりますが、刑の内容が、例えば、「懲役二年執行猶予三年」である場合には、執行猶予期間を無事に経過すれば、執行猶予の効果として刑の言渡はその効力を失うことになりますので、「刑に処せられた者」とはならなくなります。 次に、被相続人の殺害されたことを知りながら、これを告発せず、または告訴しなかった者も相続人欠格事由として規定されています。
現在では、犯罪があれば告訴・告発を待つまでも無く、当然に捜査が開始されるのが常識です。親が殺されたからといって、直ちに告訴・告発しなかった者をそれだけで相続欠格者とすることが妥当でしょうか。この規定に関しては、旧民法時代から立法論としてこの規定の削除が提案されてきましたが、どうゆう訳か新法にもそのままこの規定が引き継がれてしまいました。民法学者の中には、この規定は無意味であるとか、立法者の怠惰であるとか、非難が加えられています。
このような現状では、この規定を文字通り適用することは戒めなければなりません。この規定を削除することについては、ほとんどの法律家が賛成しています。

被相続人が遺言を作成しようとしたり、その内容を変更しようとした時に、被相続人に対し詐欺又は強迫行為を行ってこれを妨げたり、被相続人に対し詐欺又は強迫行為を行って遺言をさせたり、取り消しもしくは変更させた者は相続人となることができません。
相続人の詐欺又は強迫行為によって、被相続人が遺言の取り消し・変更を妨げられた場合、その遺言の効力はどうなるのでしょうか。
相続人の詐欺又は強迫行為がなければ、被相続人の事由な意思によって、遺言が取り消されたり、もしくは変更されたはずです。
つまり、遺言の全部又は一部が取り消されたり、別の内容の遺言が作成されていたはずです。詐欺又は強迫という妨害行為によって、被相続人の遺言を取り消したい、変更したいという意思が実現できなかったのですから、結局どういう内容の遺言に変えたかったのかも不明となってしまったのです。被相続人が何らかの手を加えたかったのに、これができなかったのですから、そのまま残ってしまったその遺言は効力を生じないものとされるのです。 次に詐欺又は強迫行為によって、積極的に遺言を作成させられたり、取り消し、変更させられたりしたときは、本人の意思を正確に反映したものではないので、この遺言の効力は生じません。
もっとも、被相続人は詐欺又は強迫行為を受けたことを理由に遺言を取り消すことができます。遺言が取り消されれば、法律的には遺言がないまま相続が発生したことになるので、相続は民法の規定に従い、相続人が規定の割合で相続することになります。こも場合、詐欺又は強迫行為を行った相続人の相続権はどうなるのでしょうか。
遺言によりこの遺言が取り消されれば相続権が生じ、その遺言が取り消されなければ相続権を取得できないとするのは不都合です。従って、遺言者の意思による遺言の取り消しの有無に係わらず、ひとたび被相続人に対し、詐欺又は強迫行為を働きかけ遺言をさせたり、取り消し、変更させた者は相続欠格者となり、相続権を失います。

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